年老いたひと
朧月

履物を脱いだらきちんと揃えること
食事のときはちゃんと座ること

きちんと ちゃんと
口癖の祖母の跡

入ってきたドアの
でてゆくドアの
閉まりきらない姿が
あくまで悲しいのでなく
事実としてそこにあり

そこにあることから
目をそらせない

時間というものは
流れてゆく
流れに流されることは
抗うことなどできないとして

変わらず祖母に言う
憎まれ口の私の未来を
案じている祖母と一緒に

さりげなくドアをしめなおし
また叱られる孫になる



自由詩 年老いたひと Copyright 朧月 2011-05-02 10:03:59
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