理屈の恋文
電灯虫

生じる現象としては同じはずなのに
その仕組み上 先に生まれるから この先ずっと後ろ姿しか見れなくて
捕まえて振り向かせても 滑らかな感情の曲線描く その横顔しか覗けない。


外部に反応して生まれているだけ その生来の受け身は承知してる。
別に逃げているわけじゃないと 気づくのがどうしたって後からってだけだから
周りの景色と違う それだけはきちんと知覚できる この位置関係が僕たちの距離。



語彙を増やした分だけ 脚力が増したと 自信満々に追いついても
掴んだ触感から 捉え損なっている その絶対性は間違いなくて
振り向かせること無く 手を離す。
生まれたての頃の記憶か 何故か真正面のあなたを知っている
手元に残るのは いつもこの確信だけ。



次元さえ一緒なら 時間だって距離だって 短くできる。
先後関係は絶対でも 1ミリでも近づけば あってないようなものだ。
青臭いって思うけど 青春だって1年毎に訪れさせたっていいんだから。
自分の立場上 無垢を装うことはできないけど
あなたへ追いつきたい。
繋がりの予感が錯覚めいて かすかに匂うから。



生まれついての位置関係が 僕とあなたの距離。
理屈っぽい僕にだって どうしたって感じるから
追う事だけは その整然とした理路に逆らって
また一度でいい ゆらめくあなたを その横顔の滑らかさを
目に写したい。


自由詩 理屈の恋文 Copyright 電灯虫 2011-05-01 23:50:34
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