顔のないひと
三奈


その人には顔がなかった

ゆっくりと動く喉仏
見なくても分かる 嗤っている
高い位置から嗤っている
私の苦手な目をして
私の苦手な言葉を紡いでいる

その人には顔がなかった

顔なんていらなかった
見たくもなかった

だから消した
その目も 鼻も 口も

私はあなたをおばけにした
私はあなたをかおなしにした

だからもう大丈夫
次逢った時は その喉仏に
最上級の愛想笑いをプレゼントしよう

顔のない人も きっと嘲笑ってくれるでしょう

いつものように
鼻を鳴らしながら





自由詩 顔のないひと Copyright 三奈 2011-04-29 00:51:34
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