増えない電卓。
電灯虫
手を離して得られる豊穣さもあって
電卓から加算の記号を外してみる。
ゼロから始め、その終わりがない無限を終局点に見据えて
得てして努力と比例しない努力を費やし、雀の涙でも加算してく。
得られた「はず」は許されず、得られる利益は逃しちゃならん。
ゴールドラッシュというには金脈が足りないから
穴を開けてでも金額を求める。
そんな裏側には底が見えない喪失が
我を避けよ避けよと急き立てて
塗りつぶされていないマスだけしか眼に入らなくて
身動きとれる足場がない。
押しすぎで,加算記号が削れて消えそう。
受身にも受身を選んだ、その選択の力強さがあるように
ゼロの保持だって。
出発点を動かないなんて、ウサギと亀をも乗り越える。
1つも決して自分の所有に含めない。
関係しなきゃ、関係できない。
そんな動的関係の意思表示。
つながりだって、毎日が更新日。
世界の余白だってなかなか減らないから
あるかないかも曖昧な、
世界の中心に楷書でフルネームを書く夢を見る。
そんな冒険心で満ちていたいから
電卓の加算記号を外して
ゼロの表示をキープって。