T・REX/Nuzzolelse boogie
はだいろ

マークに最後に会ったのは、
れんが通りのヴェジタリアンカフェで、
5本組みの魚肉ソーセージの最後の1本を、
ギンギラギンにさりげないラビットファーのハットのなかから、
鳩の手品みたいにセロファンをむいてみせてくれたとき。
恥ずかしそうにやつは言ったっけ。
ただおまけのプロ野球カードが欲しかっただけだったんだって。
ハットにはヒロシマカープのバッヂさ。
お前の売った魂の値段が、
買い取り20%UPのキャンペーン期間中だったってこと、
俺は恥ずかしいことだとは思わないよ。
ひとりっこのお前が、妹が泣いている夢を見たのなら。
ちっとも恥ずかしいことじゃない。
それを、あのとき、言えばよかった。
たまにはお前の占星術だって当たったんだよってことも。
だって、
なくしたあの万年筆、
ロンドンで落としたやつ、
お前の予言のとおり、七年後に東京で拾ったよ。
たしかに、俺の万年筆だった。
父親の形見だったんだ。
ごめんよ、魚肉ソーセージはほんとうにいらなかったんだよ。
だって、じんましんが出るから。
マークはいい奴だった。
お前の輝きがまやかしだってこと、
頭がよさそうに、みんな知ってるような口を聞いたけれど、
俺はそんな奴らをけっして許さない。
だって、見てみろよ、今、お前は、
ほんとうのスターになって、夜空にまばゆく輝いているじゃないか。







自由詩 T・REX/Nuzzolelse boogie Copyright はだいろ 2011-04-26 21:55:01
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