語らい
電灯虫

言われた方はよく憶えているように
一方的に別れさせられた彼の方がよく憶えているだろう。
きっかけは何だった?
彼に問われるのが怖くて。


関節は滑らかに動いていて、立派になった彼の振る舞いが年月を感じた。
大きくなったな、そう声をかけられ
どうも、と無愛想に答え、
大人をアピールしている自分の成長度合いに恥ずかしくなった。
白髪混じりの自分の風体にどっかで引け目を感じる。


年齢に即して見合った振る舞いを、誰ともなく、いつの間にか要求され
見えない境界線から半歩でも足を出さないために
成長と名をつけて答えなきゃならなかった。
個性を重視するという売り込みの割には、どこで決められたか同質性の水準は明確で
興味がないと標榜するのは、たどると繋がる自己否定の存在を感じさせて
忘却だけ上手くなる、その過程だけをはっきりとみていた。


それは今さら逆行するのとも違っていて

境界線の内と外の意味が無くなったから。


どうだい、楽しいときはあるか?
そう問われて
うん。
と、素直に答えられた。
うん。
二度目は接着の跡に答えて。
その気持ちを、感情なんて上等なものにしないように。


自由詩 語らい Copyright 電灯虫 2011-04-26 01:03:54
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