殺伐にいたる病
フユナ





砂浜になぜか
まるのまま打ち上げられたりんご
いつからあるのか
りんごはなかば透き通っている


食べたらひどくだめそうなのに
僕はそれを舌にのせる
のを逐一 想像する
おいしいようなひどいような
それはつまり
取り返しのつかない味だ
僕たちは
またぐことも
無視することもできない



セロファンを重ねた空の
剥落
ぱらぱらと降りそうな
血が散った
と思ったら風船だった
風船売りが
あわてて空を仰いでいる



放置されたまま
これは砂浜にかえるだろうか
そうだろうか
そうは思えなかった
人が通り過ぎていく
少しのりんごの死臭をまとって
僕たちは
またぐことも無視することもできない

僕は思うのに



たまに気付いた人が
苦笑して目礼していく



今りんごをたべたとして
これ以上追放されうる場所などありはしない
のを
みんな知っている
北の地 北の海 海のむこう
何も容れてないはずの
空き瓶
の中の空の剥落



間違って放った風船を
浜でこどもが受け取っていた

あげるつもりじゃなかったのだと
誰もが言い出せないでいる
 
 
 
 
 




自由詩 殺伐にいたる病 Copyright フユナ 2011-04-25 21:56:49
notebook Home