ぼくを捨てる朝
寒雪



青空が昨日までの
薄汚れて黒ずんだ
自らの皮膚を脱ぎ捨てて
新しい明日を迎えようと
両手をパノラマの
端から端まで伸ばしている


春になると一斉に
その体全身を花で包み
刹那散っていってしまい
後には濁った枝だけを
残していく桜を見て
ぼくも昨日までの自分を
いらないものだけ捨てて
明日がやってくる方向を
地面を両足で
しっかりと踏みしめながら
瞬きもせずににらんでる


もしかしたら
大切ななにかをこの時
捨ててしまったかもしれない
けれども
それ以上に
悲しみでいっぱいだった
昨日までのぼくの日記が
明るい言葉で埋め尽くされる
それだけを願って
ぼくは余計な肉を削ぎ落とした


十年後にぼくは
確かに笑ってここにいる
疑いもなく
そう信じて生きていくだけ


自由詩 ぼくを捨てる朝 Copyright 寒雪 2011-04-24 10:21:07
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