合図
電灯虫

判り易い合図を。
タイミングが計れない。


部屋の空気に残っている かつての感触が肌をかすめる。
視界の隅の品々が 小さく小さく思い出アルバムを今も綴っていて
はっきりと聞き取れないその声が 鼓膜を刺してたまらない。
お互いに向けた挙動がすごく軽く よく燃える枯れ木過ぎて空虚が増し
もう不協和音しか鳴り響かず CMソングが間を埋めている。


食器を洗う水の冷たさが 手の体温を奪っていく。
洗剤で綺麗にするのが 次の使用を期待してるようで虚偽の上塗りにしか思えない。
洗い立ての服の重さが 一番身近に感じて悲しい。
部屋の薄暗闇を強調する晴天の陽射しで 影ごと私を溶かしてと佇む。


トイレの隔離感の中で
ホッとしてるから
多分 もう無理。


隙間が多すぎて もう外と部屋の区別がないから
来てくれた宅配便と一緒に 運ばれたくてたまらないから
身体の肉体性に引っ張られて 心の無機質性が止まらないから


判り易い合図を
タイミングを。


自由詩 合図 Copyright 電灯虫 2011-04-24 01:00:03
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