歌好きな女
はだいろ


ビーチボーイズのペットサウンズ、
UKオリジナルのモノラル盤は、
たしか7800円くらいで買った。
USオリジナル盤も欲しいなあ。

ペットサウンズについて、
語ろうと思えば、
語りたいというひとは、
それぞれに、本一冊くらいは書くことだろう。
音楽との邂逅とは、
実は聴いた瞬間になされるとは限らない。
聴いたときは、よくわからないような、
わかったような、
それが、
聴き続けたり、
聴くのはやめてしまったり、
何年もたって、
唐突に、ほんとうに、突然に、
その音楽がからだに、こころに、宇宙に、
すとんと落っこちて、すべてが満ちわたるときがある。
ごくごく個人的に、
ごくごく稀になされる奇蹟である。
その邂逅を、ハワイのゆうべのビーチで果たすひともいれば、
自由が丘の昼下がりのランチで果たすひともいれば、
デリヘルの女の子をいじめているときに果たすひともいるだろう。

雨の土曜日、
給料が出たので、さっそく、
ダブルヘッダーを組んだのだけれど、
またまた、一人目の美少女は当日キャンセルとなった。
これで、今月、このお店、
3回連続である。
もしぼくがデリヘルの経営者だとしたら、
ある程度、女の子のわがままを許容しないとならないだろう、
という判断はわからなくもないが、
同時に、仕事なのだから、お客さんがいるのだから、
責任を持つことを教えることも、大事だという気もする。
すごく難しい線引きだけれど。
そこを考えない社会が、けっきょく、
原発なんてぽんぽん作ってしまうのではないのだろうか。
いや、・・・違うか。


二試合目の女の子は、
まあ、プレイもルックスも、
それなり、の子だった。
歌が好きで、ぼくの全然知らないプログレアニソンバンドの人に憧れて、
音楽の専門学校に通っているという。
ふーん、と言うしかない。
キスが好きだったので、
それなりには楽しめたが、それ以上のものはなく。
帰ったあと、
無性に、なぜか、ペットサウンズが聴きたくなる。


ぼくがペットサウンズとの邂逅を果たしたのは、
いつ、どこで、だったのかというと、
それは段階的というしかなく、
今日はさみしい雨、
また、ひとつ、
その中核に近づいた気がする。
ポップソングの謎である。
ぼくらの悲しみが、
いったいどこからきて、どこへゆきたがっているのかと、
いう話である。
明日、ぼくに彼女ができるかもしれない。
人生のBサイドが、始まるかもしれない。
そのゆくえは、
神のみぞ知る。















自由詩 歌好きな女 Copyright はだいろ 2011-04-23 16:51:38
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