君はかぐや姫だったのかも
乱太郎

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無言の哀しみを垂らすカオス
木霊する虚数の戯れ
無限と背中合わせになって
月が次第に傾く
頂点で迎える明日は
まだ迷いながらも十二単を纏いはじめる


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今昔のとき
蛍の明かりが頼りだった時代
従者に連れられて
牛車とともに満月に導かれた
琵琶の音が切なくて
悲しみが氷のように冷たくなっていった


?

深遠の淵で廃られた鴉の死骸
囚われ人の鎖が解かれ
都会の高層群に収められる
平屋建ての倉庫には
硝酸 亜鉛 クロロフォルム
充満する生きる死者たち


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君はかぐや姫だったのかもしれない
何度も呟く
時計のネジを虫ピンで刺すように
僕は何度も繰り返す
やがて
君が欲しがっていた
龍の涙が夜の底に一つ零れていく

?

湿った空気が僕の眠りを奪う
元服の儀式を全うすることなく
風鈴が朝を告げようと
窓際で冷たく泣き始める
僕はけじめとしての昨日を失って
朦朧と瞳の奥で昏睡する




自由詩 君はかぐや姫だったのかも Copyright 乱太郎 2011-04-21 18:51:41
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