君はかぐや姫だったのかも
乱太郎
?
無言の哀しみを垂らすカオス
木霊する虚数の戯れ
無限と背中合わせになって
月が次第に傾く
頂点で迎える明日は
まだ迷いながらも十二単を纏いはじめる
?
今昔のとき
蛍の明かりが頼りだった時代
従者に連れられて
牛車とともに満月に導かれた
琵琶の音が切なくて
悲しみが氷のように冷たくなっていった
?
深遠の淵で廃られた鴉の死骸
囚われ人の鎖が解かれ
都会の高層群に収められる
平屋建ての倉庫には
硝酸 亜鉛 クロロフォルム
充満する生きる死者たち
?
君はかぐや姫だったのかもしれない
何度も呟く
時計のネジを虫ピンで刺すように
僕は何度も繰り返す
やがて
君が欲しがっていた
龍の涙が夜の底に一つ零れていく
?
湿った空気が僕の眠りを奪う
元服の儀式を全うすることなく
風鈴が朝を告げようと
窓際で冷たく泣き始める
僕はけじめとしての昨日を失って
朦朧と瞳の奥で昏睡する