かなしみを
はるな


かなしみを
かなしみ終えたら
ひとは
笑わねばならない

かなしみが居座って
笑いかたをわすれてしまうから

こころがばらばらにちぎれて
もう一つには戻らない
体じゅうの血が流れ去って
もうあたたかくはいられない
谷底を探してもまだ
深遠があちこちにちらばるかなしみを悲しみ終えたら
ひとは
笑わねばならない

苦行のように
何かの罰のように
ひとは
笑わねばならない

かなしみをかなしみ終えるまえに
ひとは
かなしみを忘れてはいけない
消化されないかなしみは
日常になってしまうだろう
かなしみは方々にこびりつき
いくらでも人々を引きずりこむだろう
かなしみをかなしみ終えるまで
かなしみをかなしむしかない
それは誰にも貸せない
その痛みはほかの誰にも請け負えない
そうして
かなしみをかなしみ終えたひとのそばに
わたしは行って残酷な言葉で言おう
かなしみをかなしみ終えたなら
ひとは笑わねばならない
忘れかけていても
無理やりにでも
かなしみを
かなしみ終えたら
ひとは
笑わねばならない



自由詩 かなしみを Copyright はるな 2011-04-20 00:46:44
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