一つの念こぼす
山岸美香

正義面をして
弱い人を決めて、悪い奴を決めて
どちらにも心の底から軽蔑をする。

それでも子供はいつか
名前を持たない悲しみに
追い詰められて、
自分を守ろうとするのだから
もう追い詰められないように
駄目、になってしまわぬように

いっそ泣くことにしたのだ。
涙を自然に溢れるものにしたのだ。
痛みをたいそうなものと扱わずに
ずっと流れていく生理的な現象にしたのだ。

わんわんと痛みに泣いて、また労働の日々に戻る。

一つの念を込めて、変わる日々を迎える為に。


自由詩 一つの念こぼす Copyright 山岸美香 2011-04-19 19:04:15
notebook Home 戻る