春色の死
曳舟

少女だった私が 紡いでいた唄は
大人になる私に 届かないで消える

全てをもう何もかも 過去にしてしまいたくて
あの頃握り締めていた 嘘を嘘に返し
踏みしめていたはずの 現実は未だ見えず
たった今のこの今も まだ虚構のまま

くるくると回りながら フェードアウトする
何にも触れられないまま 私だけ透き通る
クロスフェードされた 数え切れない声は
遠い日のまぼろし、もう描けないサイン

花咲く季節にかつて 育てた賛歌は
もう芽生えぬ喜びへの 追慕へと変わり
全てを追い出した心で 乾いていくだけ
春を飾る言葉すら 分からなくなっただけ


自由詩 春色の死 Copyright 曳舟 2011-04-19 05:03:12
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