おそくても
佐和

たとえば 会話はキャッチボールなのに
     いきなり暴投されたときのひとの戸惑った瞳

     それでもボールをひろいに行って
     丁寧に返球するひとの思いやり


     そんな思いやりの存在に気づくこと無く
     そこいらじゅう まるでドッヂボールみたいに
     投げては返って来ない球に おかしいな、変だな
     と合致が行かなかったお馬鹿さん
     ─運動神経もにぶいわけだね



けど そのお馬鹿さんは正直村のひとだったりするから
責めることは、キレることは、皆あまりしない


たまぁに 人間関係が破たんするほどの失敗を
訳も分からずしてしまったりして 
捨てゼリフや絶交つきの説教をくらうことになる
ショックを受けたお馬鹿さんはようやく考え始めたり悩んだりする


学校じゃ教えてくれない見えない法則
家族にすら見すてられていたのかな
お馬鹿さんは途方に暮れる


学校の勉強はできないのに尊敬する友達がいたこと
それってこういう見えない類のこと


お馬鹿さんは気づくのが遅すぎたなぁと
おおきく吸って 静かに息をつく


大好きな友達に ともだちだと思われていなかった
ことやなんかを今更もって知る
じぶんで自分に呆れて青くなる


相手をおもいやるこころも知らないのに
こころを開いてもらえると思っていた無茶に気づく


気づかずに通り過ぎていただけで
思いやりを受けていたことを知る


自分の生き方に足りなかった
思いやりという共通の意識が皆にあったことを知る


お馬鹿さんは自分の愚かさにショックを沈め
今夜 しずかに目を閉じる


何日かに一歩ずつ ゆっくりと階段を昇って





自由詩 おそくても Copyright 佐和 2011-04-19 05:01:55
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