落ちるひと
恋月 ぴの
わからないから不安になるんだよね
好きなひとの心うちと
明日の空模様
開けてびっくりでは困るけど
あてにはならない春の天気予報を頼りに
ご機嫌いかがなんて訊ねてみる
わたしから好きになってしまった弱みなのか
腕組みなんかして如何にも不機嫌そうな横顔に二度惚れしそうで
あれは河豚の競りだったっけ
袋で隠した指の握りぐあいで値がついてゆく
ええか、ええか
って、おとことおんなの真剣勝負
好きになったら負けなんだ
ええか、ええか
相変わらず湯気のような白い煙もくもくしてるし
ええか、ええか
確かに自販機ってあり過ぎるんだけど
建前論だけでは物事は進まないとしても
相変わらずごにょごにょ暗がりで蠢いているし
止まったままのエスカレーターはどうにも歩きにくくて
ステップに躓いたわたしを支えてくれる優しさに
ええか、ええか
はなから勝負に負けている