忘れられない顔
……とある蛙

サクラを観ない年がこの歳になってやってくるとは思ってもみなかった。

確かにサクラは咲いている。が、サクラの中で酔うことなく、風景の一つとしてのサクラ花。淡いピンクの染みぽつり。ぽつりぽつりの悲しみが。いつまで経っても居座って、この悲しみを誰に言おう。この苦しみを誰と分かち合おう。見当つかずの毎日で、あっという間に春は過ぎ、そのうち夏が来るのだろうか。どんなに嘆いても季節は巡る。巡る季節の間に見える歪んだ悲しい顔、顔、顔、顔
その顔、全て歪んでいる。魂が天に昇る日がいつかはやってくるのだろう。それでも地縛された魂は季節の合間に顔を見せる。歪んだ季節の顔と顔、悲しい季節の顔と顔。


自由詩 忘れられない顔 Copyright ……とある蛙 2011-04-18 17:25:02
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