月影 / 春の夜の記憶
beebee





足下の明かりを踏んでいる

私は歩いていた

その舗装された道では
所々に白い線が引かれ
アクセントとなって
景色が次々と切り替って行くのだ

私は果てしない住宅地の中で一軒一軒
扉を開けて回っている

扉を開ける前に戸口から洩れて来る
明かりや賑やかな人の気配

心ときめくが でも
開けるとそこは必ず空き屋なのだった

人の気配も想いも消えて
全て消えている戸口から
昼間よりも明るい闇が見えた

振り返って見上げると天上には白い月が
一つ浮かび上がって見える

そいつが影のような白い涙を落としているのだった





自由詩 月影 / 春の夜の記憶 Copyright beebee 2011-04-17 05:11:55
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