月影 / 春の夜の記憶
beebee
足下の明かりを踏んでいる
私は歩いていた
その舗装された道では
所々に白い線が引かれ
アクセントとなって
景色が次々と切り替って行くのだ
私は果てしない住宅地の中で一軒一軒
扉を開けて回っている
扉を開ける前に戸口から洩れて来る
明かりや賑やかな人の気配
心ときめくが でも
開けるとそこは必ず空き屋なのだった
人の気配も想いも消えて
全て消えている戸口から
昼間よりも明るい闇が見えた
振り返って見上げると天上には白い月が
一つ浮かび上がって見える
そいつが影のような白い涙を落としているのだった