震える家
朧月

屋内退避地区とは
外でなるべく活動せず
屋内にいることを勧めますということ
だれも訪れずひっそりと
家の一部となり過ごすこと

それでもマンションの家賃は請求され
社員の給料も支払わなければならない
見慣れた社屋の壁は震えて
動いていない時を告げる

食料も金も尽きてしまい
今日はとうとう引っ越しの時
遠くの友が命を削って
運んでくれるものはほんとうに

彼の命より重いのだろうか
俺はなにをなくしたのだろうか
売り渡したものの代償などと
語れない過去は俺の一部になってる

生きていることに感謝などしないが
生きることを縮める権利は/あいつの
俺にあるというのだろうか
今日も屋内退避の家は震える

なにもこわくないと言っていた
あの頃の俺達を今は
殴ってやりたい衝動が拳に
つきあげてくるのをただ耐えている



自由詩 震える家 Copyright 朧月 2011-04-16 12:44:24
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