春の午後
塔野夏子

ひしゃげた白い空に
ひしゃげた日暈が架かっている

とりどりのチューリップは群れ咲き
金属的に笑っている

その笑い声の中を
黙示録に腐蝕された心臓がひとつ
歩いてゆく

果たされるあてを失くした約束と
解かれる術を持たない暗号とを
引き摺りながら

空間に微かなものうい罅を入れながら
何処へか――
長い春の午後を歩いてゆく





自由詩 春の午後 Copyright 塔野夏子 2011-04-15 19:55:21
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