夜影
相馬四弦

その透き通った影

彼女は微笑みながら泣いている

巨大な満月の中で

バルコニーの柵に腰をおろして

赤ん坊に乳房をあずけて

傍らに香を焚き

路地裏の暗がりに浸された長い髪

街をさまよい続ける孤児たちの

顔のない残像が浸透してゆく

ぽたぽたと 涙を落として

微笑みながら頬を寄せる彼女の曲線を

小さな窓からこぼれる灯りが

ぼんやりと滲ませながら

やさしく殺してしまう








自由詩 夜影 Copyright 相馬四弦 2011-04-15 13:36:04
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