フレッシャーズ カット
和田カマリ

新しい
事業年度の
始まりの月
俺の会社にも
フレッシャーズが
やって来た

超氷河期を越えて
鳴り物入りで
やって来た
ハイパーな奴等

遠い昔
新人類と言われた
俺たち世代も
2年後には
やつらの靴を
舐めているかも

何か始めなきゃ
このままじゃ
やつらに
おもちゃにされる

皆が帰った後
アスクルで今日来た
新品のコピー用紙を
一冊丸ごと脇に抱え
重役室に忍び込んだ

いつだって悩んだ時は
この儀式をしなきゃ
何も始まんないんだ

B5の袋を開けると
エッジの効いた
元気のいいのを
一枚取り出した

人差し指の爪の
付け根の肉に
縦に押し当て
シュッ
一気に引いた

熱っ
フレッシャーズに
指差され命令に従う
不甲斐ない
未来の俺をカット

続けて
パンツごとズボンを
引き摺り下ろし
亀頭に合わせると
シュッツ

UGGHHHHH
フレッシャーガールに
ムラムラと欲情する
不甲斐ない
ちんけなマラをカット

お次は
カッターシャツを
メンズブラジャー
もろともたくし上げ
フレッシャーズ代表の
入社の答辞を聞いて
思わず勃起した乳首を
シュッ

ガ・ギ・グ・ゲ・ゴー
イケ面フレッシャーに
心奪われた
不甲斐ない
コリコリの豆をカット

はあはあ
痛い
痛い
次ラストで
自らに言い聞かせた

とどめに
ハイパーフレッシャーに
媚びへつらうだろう
この不甲斐無い
俺の二枚舌を
三枚におろすつもりで
シュッ

ベーイシティイ・・・

俺は血が止まるまで
ティッシュを噛み続けた
負けないぞ
新人類の心意気
見せてやる

俺だってこの時代
なんとかかんとか
生き抜いてきたんだ

俺は
先輩としての
プライドを
守り通す事
血まみれの
ティッシュを
握りつぶしながら
ポタリポタリ
執念深く誓っていた




自由詩 フレッシャーズ カット Copyright 和田カマリ 2011-04-13 18:14:42
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