待合室の春
……とある蛙

待合室のベンチの片隅
三百代言に堆積された
一言主の判事の方便
外は春だが歩くには寒く
部屋の照明は薄暗い

世間話の片隅で
忘れ去られた真実が
書類の堆積に発酵し
異様な臭気とともに溶け出す文字に
部屋の景色は揺らめいていた

呼ばれた廊下の片隅に
真実があるかと甲虫が尋ねる
真実とは何か
幾つもの流言が堆積したものだと
猫がぼつり ぽつりと呟く

そも目的もなく歩く廊下の片隅で
塵芥(ちりあくた)が風に舞う
風の通り道の廊下とは
そも 何
塵芥(ちりあくた)が汗に塗(まみ)れて堆積し
廊下の片隅にうずたかく

外は春でも内は冬
異様な臭気のその中で
甲虫と猫が駆け抜ける
鼠一匹這い出す廊下を
廊下の先の吹き抜けに
明日の何かがあるわけもなく

呼び出す政治家の空約束


自由詩 待合室の春 Copyright ……とある蛙 2011-04-13 15:15:19
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