天晴れなエイプリル
小池房枝

春の海子猫ほどある雨虎アメフラシ

柔らかな果肉の真紅いちご狩り

カンカン石小網代神社に摂津から

スナフキン桜とともに北上する

ニョロニョロは葉桜とともに現れる

桜ほんの一瞬モランが触れていった

桜ほんの少しおさびし山もピンクに

花よりもムーミンママのお弁当


鯉のぼり川いっぱいのタルチョかな

山笑いおさめて安らぐ頃の慈雨
 
俳人の文字をほどけば人非人
 
受けとめて零して光のチューリップ

子供らのいない校庭春休み

鄙の駅スイートピーの花ざかり
 
ツキミソウまだ昼下がりまだ四月

クレヨンの緑をもっとくれと風


満天の星を従えて太陽

花びらがとよもす地面の音かすか

億京垓恒河沙那由他の春が降る

黄道光天使の梯子林立す

月において地球はいつの季語だろう

霾る日コーンスープの昼下がり
 
風、騒ぐな。部屋には入れてやれないよ

強風につき風発はお休みです


キツネおいで河原にネズミを殖やしとく

桜草ひともと野生か逃げて来たか

家ごとにさくら枝垂れる一部落

水道管破裂ゆきやなぎ噴き上がる

濃き薄きこきまぜて春河岸段丘
 
一千の題名だけの物語

ねぇリヒト、ひかりはいつもひとりなの?

留守と言へ/ここには誰も居らぬと/詩人は


地獄にもさくら極楽にもさくら

満開のアンブローシア八重桜
 
春されば速贄もはや花の中

蓑虫をまとめて隣家の隅におく

雨の日のレイラインゆくライラレン

アスファルト境いに噴出するスミレ

花腐し花の豆腐が出来さうな

春の氷雨さくらを抱いてみたくって

 
ゆずり葉の春はらはらと散る葉音

雨水吐累々花の堆積層

春寒し準急はるひ野駅通過

花筏オタマジャクシの群れの屋根

花びらが点描してくアスファルト

シリウスを一番星に八重桜

暮れ残る空青い空暮れてからも

十重二十重八重の桜の峰に月


薄紅の縁取り穀雨の潦

花びらが花びらのしとね降りしきる

一斉にひとひらずつが舞い降りる

花びらに雌雄があったら番うだろう

御衣黄か鬱金か今年も知らぬまま

花一房落ちていました折っていません

オフィーリアの小船遥かにも桜かな

月光のための手のひらハナミズキ


雨降ればカメは喜ぶ歩いてく

薔薇色の中和滴定昼と夜

街の風天源の風リサイクル

足裏で陽を指す亀のバスキング

辛子菜の岸辺の黄色にごり水
 
花粉症の真っ白なマスク鮎解禁

鎌首をもたげてひそりマムシグサ

花見好き桜を見ているハナミズキ


水を得て花がまた開く


俳句 天晴れなエイプリル Copyright 小池房枝 2011-04-11 23:33:59
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