春野
砂木

蝶の羽根を持つ馬の
たてがみは 毛糸で編まれている
影絵の後ろ 電池の照らす
いななきが 廊下の溝土を蹴る

さなぎに 芽生えてしまった馬は
何もかもが理不尽で
本当の蝶より 大きく美しい羽根も
滑稽なだけだった

いつまでも生えてこない たてがみ
帽子を ばらばらにして
首に まきつけて走った
似せなければ
偽者ですらなく

花の蜜を すすり噛む
噛んでは すする

風のない 穏やかな草原に
ひとつきりの影にまぎれ
こぽこぽ 春の花喰いが隠れている






自由詩 春野 Copyright 砂木 2011-04-10 22:31:54
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