降り来る言葉 L
木立 悟
水に流れない塵が
水のなかから夜を見ている
水と 水ではないものの影
常の渦 常の渦
遅れる光
手になじみ
音の背の丘
曇と息は見つめあう
痛みの矢が街を飛び
出てゆくことなく消えてゆく
曲がり角にひらく光
壁を覆い 夜を昇る
凪の夜の
枝葉で居る
0枚か∞枚の
明るさで居る
光も朝も
反対を向き
光も朝も
おのれの揺れを聴き
欠けた数字に
心臓が乗る
あやまちをあやまちに
応えつづける
ひとつの庭
見知らぬ器械が
見知らぬうたを
むらさきに塗る
離れることも 離れすぎることも
同じ痛み 同じ響きで
銀に緑に つづきつづく影
裾を引くような
終わるともなく
終わろうとしているような
見えない無数の
渦
息と蒼
言い含める 照らす
昼の弦 昼の弦
少し 持ち上げられて
群青の嘘や
つららがつららになる音や
雀が家に持ち帰る風
常に指揮者に背を向けて
迎えにきた
呼ぶものもなく
ゆくために
ただそのままに
発つために
鉛 錫 同意の仕草
鳴りわたり 鳴りわたり
大陸の半分を消し
鳴りわたる
明るすぎて
目を閉じるとき
誰もいない真昼の道の
ふいのひとつの渦を聴くとき
現れては消える器械
空おおう別れ
海おおう群れを飲み込みながら
夜は左
黒は黒の前に居る
海水の道をめぐり
坂へ山へ 森へ
野に閉ざされた街へ歩む
誰かが描いた庭が
庭のすみに立てかけられている
ふたつの庭が
渦の下から夜を見ている
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