artery and vein
ホロウ・シカエルボク



もう生きるのも飽いた
そんな言葉が
マジシャンの剣のように
おれという人間の
人生の箱の外から
何度か差し込まれる
不思議なほどに
致命傷は避けて
まるで生身の肉体で度を超えた遊び


入り組んだ路地のどんづまりで
果てしなく晴れた空を眺めてるような気分
あてずっぽうの鼻歌は
ディランみたいなフレーバーを下手に追いかけて


まっとうに生きるほどジャンキーになる
ヒットさせたいターゲットが
どうしようもないほどゾクゾクさせるから
ほかのものに目をやるわけにいかないのさ
おれが生きる理由がたとえば
もっと現実的などこかにあったとしても


そこそこ長く飯を喰らってきたから
ブルースを抱えてしまうのはしかたない
カウントを聞いたら歌い飛ばして
喉がかすれたら目を閉じて眠ってしまうだけさ
子守唄は
もう一度目覚めるやつだけに与えられたささやかな手段


ベイビー、もっと本当の鼓動を聴かせて
ゾクゾクするくらい艶めかしいリズムを
生きるためにあんたが選んできたものが
あんたを活動させる核になる瞬間を
譜面の中に収められる
ロックンロールなんてこの世にはないんだぜ
ほらまた、狂ったやつらが
狂ったやつらが鎮めてくれる連なりを探して
ミュージック・ショップのサイトの中をクリックし続けてる
欲望がサムネイルに集中してアクセスが難しくなる
おまえの欲望はだれかから
フレーズを拝借出来るくらいのものさ


入り組んだ路地でどんづまりに行きついたなら
壁に手をかけて乗り越えてみればいい
それがもしも誰かの土地の中なら
真っ当な通りへ出るためのやり方を伺ってみるといいさ
教えてもらえることは
決して最良の手段ではないかもしれないけれど


もう生きるのも飽いた
そんな言葉は
寝たきりの年寄りになってから吐けばいいさ
だけど、もしかしたら
寝たきりになってからの方が人生は楽しめるかもしれないぜ


ベイビー、もっと本当の鼓動を聴かせて
耳を澄まさなくてもかまわないくらいはっきりと
おれが欲しいのはよく出来たものなんかじゃない
生きるためにあんたが選んできたものが
あんたを活動させる核になる瞬間さ



自由詩 artery and vein Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-04-09 14:49:31
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