スキャット
榊 慧



今日って何日、なあ、今日って何日、俺はたぶん七日から十日の間だと思うんだけど。
記憶がとぎれとぎれなもんで感覚が合いません、って言ったらいいの?バイト?いきなりレジ立ってたりしたよ。








「果樹の、苗、売ってたから見に行こう」
「うん」
ヤマモモやらプラム、梅、柿、ブルーベリー、ラズベリー、トーが買ったのはさくらんぼの果樹の苗で、もうすでに枯れた花がついているので今年実がなるだろうと思う、って。
「昔、俺が生まれた年と一緒に育ってきてたさくらんぼの樹があって、これくらいの結構大きめの植木鉢にあって、どこの桜よりも早く咲いて、開花予報とか見ながら、俺のさくらんぼの樹はもう咲いてるんだけどなあって思ってたんだ。桜の樹もさくらんぼも、花は一緒だしね。世話をしてるという意識はなかったんだけど水はやったし草も抜いてたから手入れしてたのかな、とにかく生まれた時にそいつもうまれて、ずっと育ってきたんだけど、何かの理由で枯れて、それから果樹を育てた事はなかったね。植物、大好き。」

ゴミ置き場に枯れたレモンの樹が植わってる植木鉢があった。植木鉢だけ拾ってきた。サイズがちょうどいいだろう。
梅も育てたいな、とスコップ持って言う。
果樹とか、トマトとか、そういうの俺は外国行っても外国で育てたい。
ないとだめなんだ。






「憎悪って何」
包丁振り回したいって憎悪であってる?
死にたいって何
レジスタンス



「罵れば。」
罵れよ。罵れ。罵れ。罵れ罵れ罵れ!
今まで罵られたんだからそれと同じで耐えて終わるんだろうという推測でもって今を生きてるなんつって

今まで罵られたんだからそれと同じで耐えて終わるんだろうという推測、失くした失くした失くした失くした知らないことだらけだからぼくは
失くした




昼にチキンラーメンひと玉作って二人でつついてものたりんという意見が一致、
スープになんか入れようということで、冷凍うどんがあったけどチキンラーメンのスープにうどんはなーということで、一.七ミリのパスタを投入してぐつぐつ八分でアルデンテ、欠食児童だったんだヨネとトーが自慢げに言った。
「自慢げに言う事なのそれ」
「そのわりに料理とかできるしマトモだろ俺」
水切りしたヨーグルトに砂糖を入れて混ぜてそれを皮をとって切り分けたグレープフルーツにかける
俺さあ、お好み焼きって具、キャベツだけのもんだと思ってたからそうじゃないって知ったときびっくりしたね。母親、料理下手だし嫌いだし、俺がふつうのちゃんとしたお好み焼きでイカとか豚肉とか入れて作ったら妹がこれなんて料理、て。小麦粉とキャベツだけがふつうだったからさ、なんかもう、今はなんとも思ってないんだけど昔はもうちょっとコンプレックスだったかも、
「でもふつうにおいしいんだよ。俺はキャベツだけで満足かな」
「…トーのつくるお好み焼きはおいしかったよ。」




苛性ソーダって十八歳以上で身分証明書と印鑑が必要なんだよね。畜生買えない。「何で」「俺まだ十七」「…ああそう」






さくらんぼはいつ実るの
たぶんもう少し先。



散文(批評随筆小説等) スキャット Copyright 榊 慧 2011-04-09 12:23:43
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