尖端 / ****'04
小野 一縷


何処までも響いて鳴り止まない森の梢たち
降る雪が そうして白金の鈴を鳴らしている
耳の先の黒い兎が 雪原を駆ける

(優れた獣は所謂 「気配」を感じる 
 視聴覚と触覚、臭覚を統制する その感覚は
 近隣若しくは遠方に存在する意識を感知する)

白狼犬の視線が兎の首筋を貫く
狙撃された兎の余命は短い

子供達が ごろごろと雪上を笑い転がる
雪雲に隠された午後の淡い陽光が子供達を祝福しているよう
月は静かに雲より水色のまま今夜 銀に輝くのを待っている
遠くのせせらぎを 咆哮が砕いた


- 薄暗い
灰色に輝く狐火が ぼんやり六つ わたしと母さんと子供たち
灰色に輝く狐火が ぼんやり一つだけ わたし
灰色に・・ぼんやり 何もない だれもいない
暗い -


気配がした方向へ
即座に 猟犬が 疾る




こうして言葉が連なり進行してゆく
ただ空白の中を今 一本の 矢になって


兎が駆ける 


兎に刺さる 輝く線が見える





自由詩 尖端 / ****'04 Copyright 小野 一縷 2011-04-06 02:47:12
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