このサーモンを君に にぎり、
ヨルノテガム








 おでこをたたくとボーンと
 骨の鳴る参観日
 はまちとブリの間を通る路地を抜けるボンジュール
 せせこましくもリレーをするのに
 わたしの町ではバトンの替わりに
 冷凍サンマが握られた
(  )(     )
 コーヒーを飲む気分じゃないワ
 気分になれないわ
 バトンを塩焼きにするんじゃね―ワよ バカタレ
 バカみたいに美味いタレの略じゃね―ワよ バカタレ
 嗚呼、後ろ手には冷たいサンマの頭が先かしら
 尾が先かしら 半生かしら 秋の味覚かしら
 一年中並ぶサンマの解凍気分は春かしら
 アナタは内臓の苦味を苦にしないひと・・・・・
 手のにぎり、汗、溶けていくシェイクハンド
(±√)(嘘ばっかり)
 入れ替わり 立ち替わり
 ふれあいながら 溶けていく


 たとえば冷蔵庫の中からのカメラアングルだとか
 手を伸ばし挨拶するように覗き込んでくる人間たち
 手を伸ばし、やあ、と窓から顔を出すように様子を
 窺ってくる 好奇心を持った二つの瞳の生物。
 たとえばM字開脚の得意な
 ボーンと骨の鳴る大古時計の刻む針の決まりや
 アノ動物、絶滅危惧種な―んて名付ける呑気な
 二人とない一人の人生やら。
 何かが同じで何かが違う あれやこれやの渇きや
 うるおい だの。
 生け花や供物の後ろ姿や横顔と。

 後ろ手に、バトンでなく サンマでもなく 手でもなく
 鮭じゃなくてコーヒーでもなく コレハ サーモンの握りね!
 と走り出すことなく パクリと食べた、二カンあるから
 ひとつあげる、回転寿司屋はまるで参観日。
 釣り上げた生の魚の抵抗するちからは 怖いくらい
 半端ないゾ、ボンジュールボンソワ
 あなごやうなぎの肩を揉んでるばやいでない!ヌュルっと
 バトンを渡す町














自由詩 このサーモンを君に にぎり、 Copyright ヨルノテガム 2011-04-05 23:55:19
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