サク ラ サク
nonya


サク ラ サク

たわわな薄紅色も
頬を撫でる花風も
輪郭が和らいだ街の影も
去年とは変わらないけれど

わずかなためらいと一緒に
飲み干した酒の味は
去年とは違う

サクサクと
歩いて来れたわけもなく
クラクラと
綱渡りを何度も強いられて
ラララと
その度に自分を誤魔化して
裸裸裸と
それでも自分を脱ぎ捨てずに
螺螺螺と
少しばかり捻じくれながら
ラララと
逃げもせず立ち向かいもせず
サササと
背中に浸み込ませて
サクサクと
忘れてきたつもりだったのに

今年のサクラは
美酒の底に暗色の澱を忍ばせて
ほろ酔いの波間に
哀しみの在処を垣間見せてくれる

サク ラ サク

お喋りな花弁も
こそばゆい木漏れ日も
優しく温んだ人の影も
去年とは変わらないけれど

どっちつかずの溜息をつきながら
仰ぎ見る空の色は
去年とは違う




自由詩 サク ラ サク Copyright nonya 2011-04-05 21:48:47
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