街灯がひとつ
三条麗菜

私がひとり
あなたを待つ場所には
街灯がひとつ

災いが襲った街は
まだ暗闇の中なのに
この光は私ひとりだけを
照らしています

見上げれば
それは思いの外まぶしく
波打つガラスの模様も見えます
何事もなかった私が
意味もなく照らされていては
いけない気がします

あなたが来れば
この罪悪感も
消し飛ぶことでしょう
私は何もかも忘れるのです
私は生きる時間を楽しみ
それだけに身をゆだねるのです

あなただけが
許してくれればいい
きっとそれでいい

このところ毎日
恐ろしいニュースが流れ
そこから目をそらすなと
今はすべての人が
歯を食いしばれと
言葉もなく伝わってきます
それは静かに私達の心を
沈めてゆくかのように

私は現実を
何も見ないのではない
私は痛みを
少しも感じないのではない
私は死者を
誰も弔わないのではない

あなただけが
あなただけが
許してくれればいい
きっとそれでいい

街灯がひとつ
その下で
私は待っています
救いを待っています
もう長いこと待っています
しだいに私は
何かにまみれてゆきます
それでも待っています
私が壊れないための
細い道を進むために


自由詩 街灯がひとつ Copyright 三条麗菜 2011-04-04 01:58:13
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