畏敬
吉岡ペペロ

この像もまたなにかのものまねをしているのだ。

ここにいつまでもいたいと思った。

存在のものまねをする存在への、それは畏敬であるにちがいなかった。


重要文化財でもある東寺の五重塔は四度焼失している。

だから五度めのものまねが現在の五重塔なのである。

失火により炭化した四天王像は樹脂で補強され国宝を解除されてからも金堂に安置されている。

平安時代の作のその像は炭化による清浄が付与され、もとより宿る霊性が剥き出しになっている。

餓鬼を踏みつける剛健な足は引き締まった腹へとつながり青年の如き上半身には安らかな気概が満ちていた。


この像もまたなにかのものまねをしているのだ。

ここにいつまでもいたいと思った。

存在のものまねをする存在への、それは畏敬であるにちがいなかった。


自由詩 畏敬 Copyright 吉岡ペペロ 2011-04-03 22:59:48
notebook Home 戻る