ひとつ 水彩
木立 悟






三十五人のオーボエ奏者が
空へ空へ落ちながら
午後に銀を描き足してゆく



夜と雨
夜にうずくまり
入口の光を聴く


側道に 崖に
蜘蛛の巣に
書かれた名前
忘れてもいい


夜に夜があり
裸のまますぎる
痛みの標 指の標
触れては砕け 
砕け 砕け


鏡のなかの ふかみどりと灰
ひとつ ふたつ
髪を梳く視線
ひとつ ふたつ
濃くなってゆく


指は髪から動かずに
まぶたの重さを聴いている
空 水の糸
手のひらのむらさき


鏡はあふれ
午後の数を増し
目くばせに映る火
すぎる すぎる灰



爪の傷が残す水の輪
鉱と金属のパレットから離れ
指はふたたび
鏡のなかの髪に触れる





















自由詩 ひとつ 水彩 Copyright 木立 悟 2011-04-03 01:51:45
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