それでも俺は
朧月

俺はもうずっと飯を食ってなくて
やっと開店した店のカウンターで
三十分以内でくうはずの飯を食ってた
現場では山のような仕事がまだ
俺を待っていた
地中に埋まった管の端っこは
壊れた家にあった

入り口には汚れたみなりの
母娘がきて親父に
どうかなんでもいいですから
この娘に食べさせてくださいと
半分折ったカラダのまま
ほそく訴えた

俺は急ぎの箸をとめずにいた
店内では大学生が
酔って奇声をあげていた
店内は満員だった

どうすりゃいいんだ
どうすりゃよかったんだ
俺の箸はとまることなく
俺の顔はあがることなく

どうすりゃいいんだ
どうすりゃよかったんだ
母娘の姿はもうない
もう ないんだ



自由詩 それでも俺は Copyright 朧月 2011-04-02 20:18:50
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