春のひととき
番田
一体何を見たのだろう
捨て去られたものたちが輝いている
確かではなかった 何もかもが
海面を見つめた 水の上に無数に砕け散る
電車のつり革の隅にぶら下がると
今日も知らなかった役目を演じさせられた
誰だったのだろう 私は
ぼんやりと 切なさを抱えさせられた
すべてが労働であるのなら 何でもないことを
誰もいない日の消えていく光に見た気がした
何一つとして 持たないまま ひとり
何一つとして 持たないまま私は出かけた
何も知らない場所まで
駆けて行く 私は 走るべき場所など無くして
海のあるであろう所まで
自分であることなど 忘れながら
そして眠るのだろう
花を見た そこに 咲いた
流れる風の中で
時の隅のその中で
一本の思いを流しこみながら
もみ消されたイメージの中から それは何色だろうと
私は 感じるだろう それを
感じた気にさせられた 私は
魚の影を想像した
夜を 散歩している時に
*
一体 何なのだろう 見ていたものとは
捨て去られたものたちが輝いている
確かではなかったのだ 言葉は
波紋を見つめた テトラポットに 無数に転がる
今日も鉄棒にひとりでぶら下がりながら
何も知らなかった人を演じさせられる
誰なのだろう 私は
ぼんやりとやるせなさを抱えていた
すべてが無意味であるのなら 何でもないことが
自分ですらない その時に見えた気がした
出て行くのだろう 向かう所すら無くして
海があるのだという所まで
*
夢のある所など忘れた
そして 私は 消滅するのだろう
綺麗な花を見つけた 庭に咲いた
砕け散る青い夢の中で
時を漂う強い風の中で
一本のチューブを 私は垂らさせられながら
消えた 静かな 思いの中から
私は 見た たぶん それを
きっと 見ていた何かにさせられた 私は
魚を 意味の中に ひとつ 想像させられた
夜を流れる その 夢の途中で