悲しみ
吉岡ペペロ

禿頭にパンチパーマが生えてきたような

夜の街路樹に仄見える青葉は外灯にてらされて

現実世界にうまれた幽霊のようだった

コンビニは看板を消していて

さっき接待に使った天然ふぐ屋もリーマンショックいらいの閑散らしい

十二万支払いお客様と社員だけタクシーに乗せて

もう30分ばかり知っている駅までを歩いていた

ずっと揺れていた悲しみが探しても見つからない

酔いだ

みんな死ぬんだ

二万八千人の死に黙祷はおかしくない

なぜだかあたりまえだ

毎日どこかで二万八千人くらい死んでいるんじゃないのか

それに黙祷しないのはなぜか

それもなぜだかあたりまえだ

さっきタバコが販売制限されているのを知った

町工場から断続的な回転音

マシンの主軸が金属を加工する音だ

もっとほろ酔いたい

悲しみとは落差のことなのか

ふつうであること

ふつうでないという落差

ふつうであるという落差

だれも傷つけたくない

悲しみが酔いで拡散している

悲しみから遠ざかりその先端で

ふらふらとただ町を見つめながら歩いていた














自由詩 悲しみ Copyright 吉岡ペペロ 2011-04-01 21:48:25
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