ぬけがらです
仁村仁亮
わたしは、ぬけがらです
わたしの中身は かつて鳥篭に押し込み、鍵をかけ、どこかへやってしまった
だから、わたしは ぬけがらです
今日も わたしはわたしの存在理由をさがして
風に飛ばされそうになりながら
必死で
彷徨っているのです
しかし、わたしは、わたしの存在理由などはないという事実に、
徐々に、徐々に、
気がつきはじめているのです
わたしは ただのぬけがらです
それはとても恐ろしい現実です
その恐ろしい現実から少しでも目をそらすため、
今日も必死で
宛てもなく
彷徨っているのです
わたしは、ただのぬけがらです
今日は風が吹いていません
肉体的苦痛によってわたしを慰めてくれる風が
今日は吹いていません
そんな日はわたしにとって
とても、とても、
苦しい一日なのです
わたしは、ただのぬけがらにすぎません
今日も 夜がやってきます
夜はわたしに 冷たい蜃気楼のような感情を運んできます
その瞬間に、わたしの空洞化した胴体は
ずきん ずきん
と疼きはじめるのです
ああ、もうすぐ明日がやってきます