オープンGの季節
ホロウ・シカエルボク




絵具が水に溶けるように
ゆっくりと変わる空の色
きみのハモニカのブルースと
ぼくのストロークのアドリブ
ねじまき時計は喋るのが大好き
流しの蛇口は促されるまで
ずっと、口を、閉じている
明日晴れたときの約束を
忘れてどれだけ経つだろう
ポケットのシアターの半券
あの日の雑踏飲み込んだまま


アベニューを吹き抜ける春は
うつむいた冬を追い出し
ぼくらは慌ててコートを脱いで
腕をハンガーにして歩いた
マクドナルドの店先で
邪魔な自転車蹴飛ばして
きみが鳴らした口笛は
オープンGのロックン・ロール
イェー、イェー、イェー、フゥー!


ラブホテルの並ぶ川沿いに向かって小さな橋を渡るとき、そこで現実感がなくなるんだってよく言ってた、小さな山とファンシーなホテルと、バカ高い空のせいできっとそんなふうに感じるんだって、そうして欄干に腰をかけてハモニカを吹いた、追悼のようなマイナー、小石のように川面で跳ねていた


音を忘れたテレビは
同じニュースを繰り返してる
きみはどのあたりにいたのだろう
あれ以来ハモニカは聞いてなかった


ぼくらはまるで小石みたいだ
オープンGのチューニングを
いまではぼくは忘れてしまった





自由詩 オープンGの季節 Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-03-31 18:30:40
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