失語症
……とある蛙

頭蓋骨が揺れた日
駒落ちのフィルムのように
ストップモーションの連続で
日常と非日常が
サブミナル映像のように
いくぶんずれた頭皮の内側に刷り込まてゆく

恐怖感は突然やってくる。
震度四の恐怖感
震度五の恐怖感
震度六の恐怖感
震度七の恐怖感
全て異質の恐怖感であって
死ぬの生きるの
言い出そうとする言葉が
言い淀みながら
言い出す勇気が無くなる

強烈な刺激とともに刷り込まれた映像は
僕らの大脳皮質の前頭葉、
前頭前野のどこかを破壊して
語るべき言葉を失わせた

僕らの声は失われ、僕らの歌は失われ
僕らは、パクパク喘いでいる
僕らの喉がら漏れてくるのは
あるいは喘息持ちの患者の息であり
あるいはダースベーダーの邪悪な息遣いであり
あるいは助けを求める被災者の悲鳴であり、
あるいは生き残ったものの溜息なのだと。

しかし、今は失われていようと
今はメロディーにならなくとも
僕らは沈黙してはならない
僕らは歌わなけらばならない
響かせなければならない
僕らは言葉を発しなければならない
そして僕らは届けなければならない

すべての嘆きが無くなるまで



自由詩 失語症 Copyright ……とある蛙 2011-03-31 17:12:42
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