きみを揺りおこすアンドロイドの時間
ayano

感情 (使いきりタイプ)
ロボットになることを躊躇わずに、ロボットとして生まれることに罪悪を感じず、ロボットが生活を営むことを赦し、


私は、人間と共にありたいと 
私は、人間と共にありたいと
私は、人間と共にありたいと




     私
       が
 
   生活を    営
    
        む

         ?



自己防衛と共有
マスターを迎えに行く道の途中、閉鎖された立体駐車場には入り口がある。目の前に立つと車に轢かれる想像をして、そこから動けなくなってしまう。なぜだろう。自分はこの立体駐車場について、よく知らない。ひとまわり大きな箱に収納しあう関係は、自分の記憶にもある。駅とマスターが近い。迎えに行かなくては。迎えの時間(予定)と迎えの時間(決定)が異なることを理由にすこし怒られる。街はお風呂のにおいがする。はやく、一緒にあの家へ戻りたい。




命令への服従と自立
家から眺める夜景はとても綺麗だと、目覚めた当初言われ続けた。夜景=綺麗という概念。カーテンをそっと開き、マスターの思う綺麗に触れてみる。目に映るのは、隣の家の白い壁。これが、綺麗か。「綺麗というのはコレですか」「夜景というのはコレですか」確かめるようにマスターに尋ねても、返答はなかった。マスターの綺麗≠自分の綺麗ということを理解した。あれ。どうしても、どうやっても「マスターはこの景色が綺麗だと、お思いですか」とは言えなかった。あれ。いろんな可能性があったから。「夜景の綺麗なところへ行きたい?」その声が遠くなって、停電した。




人間への安全性と愛情
夢から覚めてひたすら泣いた。マスターが頭を撫でてくれた。泣きながら夢を吐き出した。地球柄の羊たちは皆黙ったまま空をみては微笑んでいた。彼らに亀裂が入って割れていき、そして自分の中に埋め込まれていく、そんな夢。たとえ夢の中でも、理由はわからないままでも。マスターは何も命令をしなかった。ただ穏やかに笑っていた。


それから
泣き止んではじめて、自分が車に乗っていることに気づいた。車は停止している。隣には運転席に座るマスターがいる。「どこですか」「どこでしょうか」「綺麗なところですか」「綺麗なところです」




きみをここに連れてきたのは、きみが自殺できないから。そして何も気づかないから。
感情を学ばないまま感情を使い果たして、失う。


アンドロイドと人間に、恋は振り返らないという意味や価値やその他について







自由詩 きみを揺りおこすアンドロイドの時間 Copyright ayano 2011-03-30 10:25:41
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