enjoy the silence / ****'04
小野 一縷

無音 やがて そして



銀に回転する木霊を破壊する金の雷鳴
その雷鳴が回転して赤土色の轟鳴となる
その轟鳴が崩壊して土砂のように大地は捻れる

酷い眩暈が頭痛へと直結する
感覚神経を刺激して肉体が罌粟の煙へ求愛する


静寂から生まれる色の彩 その水性の変調律


静寂から泡のように涌いてくる響き
揺れ動く水面の月光
貝のように静かな湖面
そぞろ歩く人の影は仄か

静寂から滲んでくる脈音の余韻
月影にだけ生える苔の薄緑
故郷を無くした詩人が詠うロンデル
月下に繋いでいる蒼い馬が軽く嘶く

静寂から毀れ落ちる硬いエコーの破片
森に降る霧雨は鋭く冷たい
大木の穴を覆う羊歯の上に佇むみなしご
盗んだ真鍮の懐中時計はもう動かない

静寂から生えてくる透明な不安の芽
麻の苦い香りのようにまだ若い希望
老人が沈黙の中に枯れるように眠る
若者たちは酔ったまま町から帰ってくる

静寂から浮き上がる飼犬の唸リ声に隠された虚栄心
見世物小屋から逃げた小人の物悲しいでっちあげ
子供の背中のように滑らかな蝋細工の聖母
汚泥とまだ意味を持たない言葉が次々流れる大河


言葉は静寂という水脈から こうして湧いてくる







自由詩 enjoy the silence / ****'04 Copyright 小野 一縷 2011-03-29 20:38:21
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