オールトの雲をぬけて
たま

宇宙式の貨物船にのって
オールトの雲のなかを航海している
太陽から1.47光年離れても
まだお前の重力圏内にいる

まったく、すごいやつだよ
お前ってやつは

RC2052年18月031日
ようやくオールトの雲をぬけた
もう、カレンダーはいらない
ここにはお前の意識すら存在しないからだ
お前の重力圏をぬけて
わたしはどこへ行く気なのか
今なら彗星になって還ることもできるけど
どう足掻いても
間のぬけたわたしの証しにすぎない


見えているでしょう
蒼いセルロイドの海に錨をおろした
月の舟が
あれはわたしの貨物船だよ
潮が満ちた夜の浜辺に横たわる
あなたを迎えに来たのさ

今夜の荷物はちいさな衛星だ
ダークマターは宇宙の体温みたいなものだけど
母星をなくしたちいさな衛星は
凍りついたまま語らない


あなたはもう気づいているはず
夜のひかりに
あれは街の灯なんかじゃない
あれはダークマターの恋のひかりだよ
凍りついたちいさな衛星はあなたかもしれないね
貨物船にあなたをのせて
オールトの雲をぬけたら
もう、太陽にしばられることはない
ここにあるのは
わたしの体温だけなのだから


オールトの雲をぬけて
天の川を2000光年ほど下っただろうか
ほどよい恒星の公転軌道に
ちいさな衛星をこっそり投げる

じゃあ、元気でね
わたしの仕事はここまでだよ

神でもなく、仏でもない
それがわたしたちの友情なんだ


遠ざかるちいさな衛星の
かすかなパルスが
わたしの背をたたく
ふり向くなよ
そう言い聞かせて
ほんのすこし加速してみる


どこへ行こうか
どこでもない世界がいいわね

そんなとこあるのかなぁ
あると思う
まだ、星の生まれていないところ

おい、おい
そんなとこ死ぬかもしれないよ

一度だけなら恐くないわ

あなたとなら


空の果てはどこにあるのだろうか

いつものわたしをのせて
宇宙式の貨物船は
三千大世界の干潟に消えていく



やばいなぁ・・

















自由詩 オールトの雲をぬけて Copyright たま 2011-03-29 18:19:26
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