さくら
草野春心

  さくら、
  きみは花ひらき
  したたかに水面を染めてゆく



  さくら、
  もうきみの匂いがする
  春が運んでくる
  忘れかけていたものたちを
  そっとひとかかえにして



  この国にも
  きみの咲かない街がある
  あるいはそれどころか
  誰もいない街
  ぼくたちは
  そこにきみを届けてやれない
  ぼくたちは
  不器用な生きものだね



  さくら、
  きみを憶えておく
  せめて誇り高く生きるために
  悪意に
  痛みに
  天災に
  事故に
  妄執に
  虚飾に
  嫉妬に
  弱さに
  もう二度と屈しないために




自由詩 さくら Copyright 草野春心 2011-03-28 23:30:18
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