/オキアミ色の空/
アラガイs


)誰もいない磯辺で釣りをしている老人がいる
餌は野菜の切れ端だったがクーラーの中はいっぱいだった 。
( なにか釣れますか ?) 」ガードレールを跨ぎ岩場に近づいてゆくと、クーラーのひとつが「真新しいのを見て、僕は話しかけるのをやめた 。
生きた魚なんて、もう何年も見ていない 。
ぎっしりに積まれた魚拓のアルバムには(引き潮の香りが漂っている
老人は、 きっと(海)を持ち歩いているにちがいなかった 。

)人々が海岸線から去ると
磯の景色も穏やかになり
帆を渡る鳥の姿も消え失せた
(波が海苔と打ち寄せれば竿も大きく撓る
老人は風を受けて、二度思い切り杓り上げた
岩陰に立て掛けられた糸の切れた釣り竿には
墨で名前が二つ掘ってあった 。

(あれから
海沿いをさまよいながら歩いていた僕の肩にも、
追いかけてくる陽射しの眩しさは隠れ
)遠く、霞む、あの頂きの後ろ背に沈むとき
世界は/予知できない放砂の霧に浸される/と、わかっていた//
///滲む夕暮れの空が薄紅色に染まる///
//「箱のなかの魚影
/
ただよう午後の微熱は遅い凪に冷やされて
釣り人の背はやわらかな陽を浴びる
「たぶん 老人は魚を釣りあげるだろう 」
ふり返る/影線の先を追いながら「僕はガードレールの車へと向かった 。









自由詩 /オキアミ色の空/ Copyright アラガイs 2011-03-28 03:56:36
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