巣
中山 マキ
恋人の片隅で私は
命を紡いでいたのだろうか
知らぬ間に
さみしいとはまた違う所に
引っ越してきてしまった
「マイルドセブン、1カート下さい」
ツタヤへ行って旧作を1週間
白いクリームが入ったドーナツを三つ
いつもの街頭
いくつもの背中
笑いながら、捨てられる
それは後にも先にもどうでもいいものばかり
そうじゃない
言い訳をいくつも拾い集めて
泣き顔さえ
眺めているだけ
きっと 小船に乗らずとも
私は流れていける
踏ん張っても
踏ん張っても
じわじわと歩み寄る何かが
断りもなく
私の背中を押してくれるから
それなのに大げさな結論にはどうして
すぐ辿り着けないのだろうか
スカイツリーより
もっと分かりやすい
温かい場所へ帰るためだけの
ありのままの答えに