風邪
……とある蛙

風が涙を後ろに吹き飛ばしてくれるよう
顔を切り裂くような冷たい北風に顔を向けて
身体をつんのめるようにして歩き出す。
冬の並木道は魚の骨のような街路樹と
銀色に輝くアスファルトの路面が光って
その坂を下りて行く途中の信号はいつも赤です。

自分の生き様を見よ 
っと世間に大袈裟に示したいのですが、
世間は北風なんぞよりもっと冷たくて
俺が示した生き方なんぞ一顧だにせず
さらに強う北風を吹き回すので、
すっとこどっっこいな僕は
女房からも蔑まれて
北風より冷たい世間の中を
まるで冬眠など忘れたかのごとく泳ぎ回るのです。

しかし、風の冷たさは相変わらずなため、
もうひどい風邪をひいてしまい
逃げたい気持ちはやまやまですが、
もう風邪を背負い込んでしまっているので
絶対に逃げられない病の関節の痛さと
人には分からない重さを感じながら、
今日もこの道を歩いて行くのです。

さらにこれから何日も何日も

仕事じゃ、仕事じゃ。



自由詩 風邪 Copyright ……とある蛙 2011-03-25 12:29:10
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