麻葉童子/ ****'04
小野 一縷
本来 ぼくは
日本一のガンジャポエトだった
前科を背負い込まず のうのうと生きてきた
それが最近では
日々
−化学物質で肥えてゆく
眼つきだけは痩せて尖る−
昼
−花壇の手入れをする美容師の男
自動販売機でジュースを買う鳶の男
随分と綺麗に映った−
夜
−煙草の吸い過ぎで眼がまた冴える
涼しい夜
熱い眼では眠れず
結局詩などを書いてみる−
詩
−暗い重さを背負った渓谷の夜
風が冷たく素通りする無人街
やがて吹いてくる灰色の雪
荒廃 廃墟 放射能 誰もいられない場所
それらが遠く 遠い・・ 目蓋越しに 見える
ああ けれど 眼をつむっても 無色の光に 焼かれるんだ−
夢
−沈んでいる苔生した 石の沈黙を
囁きで破る 気泡になって
「きみの身体には もう居られない 時間切れだよ」と
「次は誰のところへ 行こうかな」と
緑の掌の童子が ぽっかり
黒い淵 瞳孔へ 浮かんで 弾けて
「じゃあね」と にっこり
笑顔で 消えた−