散華
木立 悟
にわかには信じがたい歌と指によって
けだものは のけものは 降って来る
目にあまるけだもの
手にあまるけだもの
首を差し出せば
からみつくけだもの
出たり入ったりする小鬼
緑の背中の笑いを見せて
壁から 扉から 虚ろから
泣きやんだ子の手にうつる
アスファルトの光のなかを
赤い着物の子が通りすぎる
三重 四重の目をした犬が
怖れてはいけないと呼びかける
朝の月 夜の月
光が溶けた水に浮かぶ
透明な灰たち つぼみたち
すべてのけだものの虹彩が持つ
一瞬の昂りのなかに咲く
自由詩
散華
Copyright
木立 悟
2003-10-15 00:31:15